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ル・コルビュジエは日ごろ手帳(小さなスケッチブック)を持ち歩いて、気になったこと、目にした風景などを、事細かく記録していました。中でも『東方への旅』『ドイツ紀行』といった一連の手帳は、復刻版が作られて出版されています。一方、「東方旅行」の際には、「クピッド80」というカメラを持参し、多数の写真を残していますし、他にも旅行先などで写した大量の写真については、研究書も出版されています。
彼は手で描く方が記憶に残るとして、その重要性を語り、写真よりもスケッチを優先するようになりますが、同時に彼は写真の有効性も十分に理解し、多く撮っていたことも知られています。
ル・コルビュジエが撮った写真には、画家でもあった彼ならではの構図へのこだわりがみられ、要素をそぎ落としたシンプルな画面構成には、彼の建築に通じる表現がみられます。
彼がデザインや掲載写真の選定も行った自選の『全作品集』を見ると、そこに掲載されている建築写真は単なる建物の記録ではなく、「この建物はここがポイントである」「こういうふうに見てもらいたい」という、彼の強い意志が込められていることが感じられます。
彼の周りには何人もの写真家がいました。彼のアトリエには、のちにファッション写真家として有名になるホルストといった変わり種も居ました。戦後は、《マルセイユのユニテ》以降の現場に同行して、ル・コルビュジエから「建築家の魂をもっている」と評されたルシアン・エルヴェは、ル・コルビュジエの眼の代わりとなって、彼の建築物を捉え続けました。また、アーヴィング・ペン、マン・レイ、「マグナム」のルネ・ブリ、ロベール・ドワノーら、著名な写真家がル・コルビュジエのポートレートを撮影しています。丸メガネに蝶ネクタイのル・コルビュジエは、フォトジェニックな存在だったのでしょう。
写真 合計225点