アーヴィング・ペン Irving Penn

アーヴィング・ペン(1917年~2009年)はアメリカ・ニュージャージー州出身の、ポートレイト写真の第一人者です。

フィラデルフィア美術大学ではファッション雑誌『Harper’s BAZAAR』のアートディレクター、アレクセイ・ブロドビッチ(Alexey Brodovitch)のもとで学び、同誌をはじめ、第二次世界大戦後のファッション写真で活躍しました。なかでも、雑誌『Vogue』を飾った写真の数々は、洗練された美しさでとくに有名です。

著名人や様々な職業の人々を多くとらえたモノクロのポートレイト写真では、何もないシンプルな背景の中にその人を置いて被写体と対峙することで、彼らの個性を見事に引き出しています。

ペンは、《国連本部ビル》の計画のために何度もニューヨークを訪れていたル・コルビュジエを撮影しています。このときちょうど60歳だったル・コルビュジエは、トレードマークである蝶ネクタイではなく普通のネクタイを締め、布を敷いた台の上にかなり不自然な姿勢で腰を下ろしています。口を一文字に結び、じっとカメラに向かう彼の表情からは、静かながら秘めた闘志が窺えます。多くの写真家がル・コルビュジエを撮っていますが、彼がこんなにポーズを決めている写真は他には無いといって良いでしょう。ペンならではの、スマートでスタイリッシュなル・コルビュジエの一面を捉えた作品です。