彫刻、浮彫

ル・コルビュジエが手掛けたのは平面作品だけではありません。彫刻や、建物の外壁に刻んだ浮彫など、立体あるいは半立体の作品も手掛けています。

ル・コルビュジエには、ノルマンディ地方出身の家具職人の友人ジョセフ・サヴィナがいました。サヴィナが試しにル・コルビュジエの絵画を立体的につくってみせたところ、ル・コルビュジエはそれを非常に気に入り、サヴィナとの協働が始まることになりました。

ル・コルビュジエが下絵を描き、サヴィナが木を削り、組み合わせて形をつくり、最終的にル・コルビュジエが手を入れ、色を塗って完成させる、まるで建築物をつくっているような共同作業でした。こうして作った彫刻作品に、ル・コルビュジエには珍しく「JS & LC」(=Joseph Savina & Le Corbusier)と、サヴィナの名前を併記したサインをしていました。それだけ、作品に対するサヴィナの貢献度が高かったことがうかがえます。

「浮彫」とは本来、「彫って立体的になるように制作したもの」ですが、ル・コルビュジエの場合は、コンクリートの壁面を仕上げるときに型を使い、型押しをして制作することで浮彫のように立体的に見せるものでした。建築壁面に作られた浮彫は、その作品へのル・コルビュジエの署名のような意味をもっていました。「モデュロール」の寸法をつかって建てられた《ユニテ・ダビタシオン》の壁面には「モデュロール」のシンボルが、インドの建築には現地の動物や伝統的な模様が表現されています。また、夏と冬の太陽の運行を示す図は、太陽の陽射しの移動を考慮した建築であることを示しています。このように、その建築作品を象徴するシンボルを壁面に残したのです。