特別企画 フィリップス・パビリオンと《電子の詩》

フィリップス・パビリオンと《電子の詩》

公開:2025年4月
毎年1作品ずつ、ル・コルビュジエが手掛けたプロジェクトをCGで制作し、公開しています。
今回は、1958年の万博のために建設され、その後取り壊されたため現存していないパビリオン建築をCG化しました。
その際、パビリオン内で上映された映像作品も、CGの壁面に投影してご紹介いたします。


フィリップス・パビリオン

ル・コルビュジエはオランダの電器メーカーであるフィリップス社より、1958年のブリュッセル万博のためのパビリオンとその中で上映する映像作品の制作を依頼されました。 パビリオンは、フィリップス製品の宣伝をする場ではなく、新しい時代精神を表現する空間であることが求められました。
そこで、ル・コルビュジエは事務所スタッフのヤニス・クセナキス(のちに現代音楽家として大成)を担当として、制作にとりかかりました。

「フィリップス・パヴィリオン 外観」  1958年 モノクロ ゼラチンシルバープリント

パビリオンは、鉄骨を組み立て、ワイヤーでフレームをつくり、その上にコンクリートパネルを載せていくという方法で建設され、複雑な形をしています。
中では、約8分間の音と映像のショー『電子の詩』が上映され、現代音楽家エドガー・ヴァレーズの音楽に合わせて、ル・コルビュジエ自身が制作したフォトコラージュと不定形な色面(アンビエンスと命名)が投影されました。

アンビエンス(『電子の詩』第7章)の投影の再現

『電子の詩』(Poème d’Électronique)

10分(本編8分+インターバル2分)を1セットとして繰り返して上映。「起源」「精神と物質」「黎明期」「人工の神」「時はいかに文明を形作るか」「調和」「すべての人類へ」の7つのセクションからなっています。 古代の美術、宗教美術、科学者や労働者たち、人間が作った産業技術などに続いて、戦争の脅威が映し出され、やがてル・コルビュジエによる調和のとれた町のイメージが登場し、最後は次代を託すべき赤ん坊の姿で全体を締めくくっています。
メインのフォトコラージュはモノクロですが、そこに、赤、青、緑などの照明が加わり、これらが内部の湾曲した壁に投影されました。イメージ画像が矢継ぎ早に映し出され、400個を超えるスピーカーから現代音楽がかぶさるという、映像と音楽に取り囲まれる強烈な体験を観客に提供しました。

投影されたフォトコラージュの一部

◎博覧会データ

Title: Expo Universelle et Internationale de Bruxelles–Wereldtentoonstelling Brussel 1958
Theme: Evaluation of the world for a more human world
Category: General exhibition category 1
Space: 200ha.
Country: 42 countries
Visitor: 41,454,412 visitors
Cost: 2530500000FB
Period: 06 juillet 1958 ~ 29 septembre 1958