世界文化遺産
カップ・マルタンの休暇小屋
Cabanon Le Corbusier

コートダジュールきってのリゾート地ニースからイタリア国境に向かって少し行った小さな岬カップ・マルタンの付け根の集落がル・コルビュジエのお気に入りであった。ここにル・コルビュジエが妻イヴォンヌへのプレゼントとして作ったのが《休暇小屋》である。
人体寸法と黄金比を元にしたル・コルビュジエ・オリジナルの尺度「モデュロール」を用いた、こじんまりとした10畳ほどの小屋。高さの違う什器が効果的にらせん状になるように配置されている。内装はベニヤ、外装は丸太 室内はカラフルに彩色されている。
70×70㎝角の窓が2つ、70×30㎝の窓が一つ、換気用の縦長の窓が2つあるだけで、開放的というよりは隠れ家のような空間である。
K・フランプトンは窓の扱いに注目している。北側はベッドの高さのところに細長い片開き。東側は洗面の横に両開き。南側は内側の鏡が景色を内に取り込み、座った位置から仰ぎ見る視覚だ。切り取る風景画が方角と目線の高さを違えて見せる演出をしている。
隣接する居酒屋「ひとで」とは、屋内の扉で両者はつながっているのだが、これは《休暇小屋》には台所が無く、食事は「ひとで」で摂っていたためである。
小屋の下には、ル・コルビュジエが大変気に入っていたアイリーン・グレイ設計による海辺の家《E1027》があり、彼は勝手にここに壁画を描き、グレイから非難されていた。
1957年にイヴォンヌが亡くなってからは、一人で訪れていたが、1965年8月27日、ル・コルビュジエはここの下の海岸で海水浴中に心臓麻痺をおこして亡くなった。
