世界文化遺産

シテ・フリュジェス
(ペサックの集合住宅)

Quartiers Modernes Fruges

所在国:フランス
竣工年:
施主:アンリ・フリュジェス氏

ル・コルビュジエに心酔した事業家アンリ・フリュジェス氏が、自分の工場労働者たちのための住宅を大量に建設しようと計画し、その実施をル・コルビュジエに頼んだ宅地開発事業である。当初200戸あまりを予定していたが、実際に完成したのは約50戸あまり。それでも、色とりどりの住宅が立ち並ぶ街路の景観は圧巻である。3階建ての摩天楼型から、アーチ状の屋根のテラスで連結されるアーケード型や、凸凹して塊を形成するケコス型、ジグザグ型などの住宅が、繰り返されるリズムの中に配置された。

5mの立方体を1単位として、それとその半分のサイズの組み合わせによる幾何学的な住宅にすることで、標準化された安価な量産住宅をつくろうとしたが、実験的な試みが多かったため、最終的には高くついてしまった。

木や石、鉄筋コンクリ―トなどによってつくられたが、セメントガンで表面は質感を隠し、白、こげ茶、薄緑、ブルー、ピンクといったさまざまな色で塗装することで、重量感を軽減し、光と影を強調しようとした。

カラフルな四角い箱が並ぶ街区の様子は現在見ても古びていないが、当時は、田舎町にこのような住宅は新しすぎて受け入れられず、水道や電気が引けず、3年間空き家状態が続いたという。

その後に入居した住民たちが陸屋根に三角屋根を付けたり、窓周りに装飾を加えたりするなどの改変を行ってしまった結果、すっかりオリジナルの姿が失われたが、1980年代になってから、住宅建築としての重要性が認識され、文化財に指定され、修復作業がすすめられた。現在では1棟が展示棟として公開され、他の住戸は大切に住まわれている。