ル・コルビュジエの美術館建築

ムンダネウム FLC 24579

ル・コルビュジエによる美術館建築は大きく分けると2つの系列があります。

彼が最初に美術館というテーマに取り組んだのは、1929年の《ムンダネウム》です。ジュネーヴに計画された人類のすぐれた作品を収める大きな美術館をつくるというプロジェクトで、このときすでに「無限成長美術館」というコンセプトの原型を提示しています。

すなわち、美術館の中央部をスタート地点とし、ぐるぐると外に向かって巡りながら展示を見ていく。収蔵作品が増え、展示スペースが必要にあれば、外側にどんどん増築していく、無限に成長するという美術館です。《ムンダネウム》が実現にいたらなかった後も、彼はさまざまな機会にこの美術館のプランを提示し続けますが、なかなかこのアイデアを実現に結びつける機会はありませんでした。ル・コルビュジエが手掛けることができたのは、《サンスカル・ケンドラ美術館》(アーメダバード)と《チャンディガール美術館》というインドにある2つの美術館と、東京・上野にある《国立西洋美術館》だけでした。

もう一つ、企画展示を見せることを主眼に置いた展示施設の系譜があります。

リエージュの博覧会でのパビリオンをはじめ、大きな屋根の下に回遊しながら展示を見るスペースをつくるというもので、1937年のパリ万博で作った《新時代館》は全体がテント張りではありますが、同じアイデア上にあるといえます。これも繰り返し試みますが、なかなか実現にはいたりませんでした。《国立西洋美術館》の敷地内に計画した《展示館》に続いて計画されたのが、《アーレンバーグ美術館》であり、最終的に実現できたのが、チューリッヒの《ル・コルビュジエ・センター》だったのです。