1920年代の建築

サヴォア邸

1926年、ル・コルビュジエは「新しい建築のための5つの要点」を発表します。ピロティ、横長の連続窓、屋上庭園、自由な平面、自由な立面の5つです。いずれも柱と床スラブの建築になることで可能になったことです。

これらは1920年代の集大成ともいえる《サヴォア邸》で最も洗練された形で実現しています。1フロアがおよそ400㎡もある巨大な住宅で、週末にパリの喧騒を離れ、のんびり過ごすための週末住宅として、セーヌ川を見下ろす高台に建てられたものでした。

家の中心には螺旋階段とスロープがあり、来訪者を散策に誘います。そして、2階ホールを起点にからリビング、キッチン、あるいはプライベートな居室へと進み、さらにテラスから斜路を登って屋上庭園へと向かうという、流れるよう「建築的プロムナード」が考えられています。そして、壁はピンクやブルーなどに塗り分けられ、浴室ではトップライトからの陽射しが青いタイルを艶やかに照らしています。

こうした動きへの配慮は、住宅だけでなく、大規模な建築作品での複雑な人や物の動きに対してもなされており、斜路や階段といった上下の動きだけでなく、車の進行を考えたガレージの配置や、平面プランなどで対応することによって、ダイナミックな動きを作り出しています。

ル・コルビュジエは救世軍の依頼を受け、パリ市内に3つの施設を手掛けています。これらはいずれも救世軍を支援していたポリニャック公夫人を通しての依頼でしたが、彼女も芸術家のパトロンとして知られた存在でした。